2023年の11月末日に1つのお店が閉店しました。
そのお店は滋賀県長浜市と福井県敦賀市の県境にある
とろろ蕎麦が看板メニューの民芸茶屋 孫兵衛
私はそこで働かれている方から、営業最終日の撮影をしてほしいとご依頼を受けました。
その日は雪の予報で、平日の木曜日。
閉店すると聞きつけてお花や贈り物、として労いの言葉と感謝を伝えに来店されるお客様が来られていました。
閉店までの1週間ほどは大変混雑したようですが、閉店当日は皆さん穏やかに営業されていました。
このお店は私が物心ついた時にはすでにあって、近所では知らない人はいないお店でした。
お話をお伺いすると
元々は先代が県境でドライブインをされていて、今から50年ほど前に蕎麦屋さんを始められたそう。
建物は長浜市の西浅井町から当時で築190年のものを移築して、今は築240年の茅葺の建物だそうです。
茅葺の葺き替えなどは店主が職人さんのところに行き勉強しで自ら行われていて、
庭の手入れなども店主が全てしていたと娘さんからお伺いしました。
お蕎麦は先代の店主と奥さんが始められ、息子さん今の店主に引き継がれたとのこと。
最終日は店主のご家族総動員でお店に来られていました。
皆さん明るくワイワイと手際よくお客様のお蕎麦を提供されていました。
店主ご夫婦の心の温かさを感じるお蕎麦は寒いこの時期にいっそう染みました。
県境の行き交う人々を見守り続けたこのお店も閉まってしまう。
寂しい気持ちもありますが、店主のお考えでは
今体力のある内に自分の代で今後の事を考えて締めるという事でした。
今後は事業継承の方を募り、志ある方へ受け継いでいければと。
歴史ある建物と思いを受け継いでもらえる日が来ることを願うばかりです。
誰かの人生の岐路や節目に立ち会えた事、記録の写真を撮れたこと
写真を撮る仕事をしていて良かったと感じる日でした。
長い間お疲れ様でした。
そしてこれからの新たな人生が素晴らしいものでありますよう。